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2010年度弓削商船高専_吉田 広平さん
弓削商船高専OBの吉田さんは、自動車関連の製造業で勤務後、現在、エンジニア育成の場で教員をしている方です。高専から大学院まで情報工学分野で学んでいたものの関心を持っていたのは「ものづくり」とのことです。 大学時代には、自動車研究部に所属し、学生フォーミュラ大会にも出場し、自信とチームワークの重要性を実感したそうです。そして、就職後、製造現場に身を置く中で、製造業がチームワークと安全を基盤に成り立っていることを学び、その経験から、学校での課外活動が社会で役立つ学びの場であると改めて感じたそうです。
現在、教育現場で学生と向き合う中で振り返ると、課外活動での学びが今の自分に大きな影響を与えているとのことで、現役の高専生に対し、「今のうちに様々な体験を積み重ね、将来に活かせる力を育んで」ほしいとのメッセージとともに、「今を充実する」気持ちを大切にしてくださいとのご助言をいただきました。
(文責:連合会事務局)
皆さん、こんにちは。弓削商船高専OBの吉田広平です。自動車関連の製造業で10年ほど勤め、現在はエンジニアを育成する場で教員をしています。今日は、高専生の皆さんや、高専に興味を持つ方々に向けて、私の経験をお話しさせていただきたいと思います。
私の学びの道は、一貫して「情報工学」でした。高専から大学、大学院へと進み、情報工学科や知識情報工学、情報・知能専攻といった分野を学びました。しかし、実は私が関心を持っていたのは「ものづくり」の方でした。実家の果樹園で作業を手伝ったり、生活の中で必要なものを工夫して作ると、家族や知人が喜んでくれる。こうした「作ることの楽しさ」が、自分のエネルギー源だったのです。高専では比較的自由な時間があったため、学外や研究室に所属して活動を行っていました。
大学時代に経験したフォーミュラカー製作
大学に進学した後、自動車研究部に所属し、学生フォーミュラ大会に出場しました。私の関心は車そのものの設計というよりも、「どうやって作るか」という工程にありました。部活動で仲間と協力し、時に苦労しながらもフォーミュラカーを走らせることができた経験は、自信とチームワークの重要性を実感する場でした。製造業での経験と、高専での部活の関係
卒業後は自動車関連メーカーに就職し、生産技術開発の分野で10年ほど製造現場に従事しました。生産技術開発は製品を開発する技術者の期待に応えて、市場にない製品を生み出すために試行錯誤するお仕事です。この間、学びとして大きかったのは、製造業がチームワークと安全を基盤に成り立っているということです。チャレンジするということと、危険を冒すことはイコールではありません。メンバーの身の安全は必ず守られるべき前提です。高専時代の運動部で学んだケガの予防やトレーニング実施、競技ルールを守るという行動の訓練は、製造業での「安全」に通じるものでした。こうした経験から、学校での課外活動は社会で役立つ学びであると改めて実感しました。現在の教育現場での仕事 - 未来のエンジニアへ向けた思い
縁あって今は、機械や情報分野の研究をしながら、エンジニアを育成する教育機関で、学生と向き合っています。振り返ってみると、私が高専で学んだ授業内容だけでなく、課外活動で得た仲間との絆や実際に「手を動かして」学んだことが、今の自分に多大な影響を与えています。皆さんも、今のうちに様々な体験を積み重ね、将来に活かせる力を育んでください。現代は、ものづくり自体はどんどん自動化されています。製造工程の多くは機械やシステムが担う時代となり、「作る」ことそのものは日々克服されつつあるとも言えます。しかし、社会を回す生産現場や情報システムには、なぜかいつも発展する余地(=社会的な課題)が残されていて、技術的なレベルでの対応や、技能的なレベルでの対応が避けては通れないのが世の常です。システム化が困難な複雑な現実において、課題の解決(=社会の発展)をするにはクリエイティビティが欠かせません。そしてその創造力は、異なる分野を融合し、協業する営みから生まれるものだと私は信じています。ぜひ「今を充実する」気持ちを大切にしていってください。私は今も、チームで仕事や趣味でチャレンジし、工夫することを愉しんでいます。
皆さんの成長を心から応援しています。
2024年11月
吉田広平