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1969年呉高専_答島一成さん
呉高専OBの答島一成さんは、呉高専の機械工学科を第一期生としてご卒業され、東芝に入社後、配属された工場長直轄の「自動化推進グループ」が、技術者人生の始まりだったそうです。
東芝を退社後、起業され、「革新的な教育システムの創造」という企業理念を掲げ、現在は株式会社アドウィンの代表取締役としてご活躍されています。 (文責:連合会事務局)
私は呉高専の機械工学科を第一期生として卒業し、 東芝に入社しました。ロボットやNC 制御が台頭し始 めた頃だったので、配属先は計測事業部を希望しまし た。しかし、医用機器事業部への配属を打診され、や むなくそちらに配属となりました。各地の工場や事業 所の見学が2ヶ月続き「ここだけは来たくない」と 思っていた玉川工場に赴任することになりました。
玉川工場に赴任して、3役面接がありました。医用 機器事業部長、工場長、技師長の面接で、どの部署に 行きたいかを決める面接でした。「君は何をやりたい のかね?」「私は、医用機器事業部なるものがあることも知りませんでした」「ここに来たくはありませんでした」「では何がしたかったのか?」「NCやロボット開発です」「それならぴったりのところがある」ということで配属されたのが工場長直轄の「自動化推進グループ」でした。ここから私の技術者人生が始まりました。数年間「こんなに面白いことを、お金を貰いながらできるのか!ラッキー!」という気持ちでした。今、振り返ると大変良い時代だったと思います。ここでは様々な仕事をさせてもらいました。失敗もいっぱいさせてもらいました。生意気なことも言いました。「ここには私を指導できる人はいません」「堀川町の自動機設計グループに実習に行かせてください」と。当時の蛍光灯製造ラインなど、東芝における自動化のメッカのようなところへ3ヶ月間実習に出させてもらいました。マイコンも出始めで、若手が競って勉強を始めるような時代でした。入社7年後には、玉川工場の自動化設計グループのリーダーになっていました。意欲的な仕事もいっぱい抱えていました。X線制御装置の自動試験機という課題も500万円の予算で推進中でした。必要な部位の電圧・電流・絶縁耐圧などを自動測定して判定印字する機能を持っています。操作パネルのダイヤルやつまみを設定して、その設定通り出力されているかを無人で判定する装置です。しかし、つまみを回す部分を自動機で行うことに難航していました。「納期は守れ、追加予算は出せない、サービス残業も認めない」大変な状況に立たされていました。ここで、救世主があらわれました。東芝はイギリスのEMI社から頭部のCTスキャナを輸入し、国内に販売していました。当時は1枚の頭部断層写真を撮影するのに3分間かかっていました。これを1分に短縮するためのプロジェクトが持ち上がりました。そして、コンピュータシステム・電気・機械の3人のエンジニアをイギリスに派遣することになりました。そして、機械エンジニアとして私が指名されたのです。3ヶ月ラドレット工場でCTの改造や試験の訓練を受け、帰国後はそのまま、CTの国産化に参画することになりました。それから3年、川崎にあった玉川工場が栃木県大田原市に全面移転しました。そのとき、周囲の反対を押し切り、東芝を退社し広島に帰りました。自分は「いずれ起業したい」という目標を持っていたからです。「やめて後悔するか」「やめないで人生の終盤で後悔するか」どちらの後悔が大きいかを考えて、退社し起業することを選びました。退社時には妻と長女、さらに妻のおなかには次女がいました。その当時ビデオが出始めだったので、ビデオを使って婚礼の撮影を始めました。これで日銭を稼ぎながらビジネスを学んでいこうという大雑把な作戦でした。その後、自動機やNC制御工作機械などの商品説明用のビデオも受注しました。また、東芝のX線CTスキャナの海外サービスマン研修用として20数本で構成されるビデオマニュアルも制作しました。「革新的な教育システムの創造」という企業理念を掲げたのもこの頃です。高専時代、倫理社会の試験がありました。このとき「国家としてなにが重要か」という問題が出ました。「教育こそ国家の大事である」という内容の答案を書いたことを思い出します。東芝でCTの仕事をやっているときに、機械設計の部長から「機械設計製図のビデオを作ってくれよ、最近は図面もろくに書けない新入社員が多い」と言われて作ったのが「機械製図入門」。オーム社の新電気の編集長から「強電電気技術者のためのエレクトロニクス入門」という連載を2、3年続けた記事をもとに作ったのが「キットで遊ぼう電子回路」。このようにして、徐々に工業関係の学習コンテンツを拡充してきました。数年前からIT技術を教育に活かすべきだと思い、これまでのコンテンツをWEBで閲覧できるように開発を進めてきました。弊社の教材は職業教育に大変有効です。これを東南アジアやアフリカの子供たちに教えて、経済的に自活できるようにしたい。このような願望を20年以上持ち続けていますが、ITで動画配信を行うことでそれができると考えました。しかし、コンテンツをWEB化するためにHTMLやPHP、あるいはJavaScriptでソースを書くのでは手間がかかりすぎるし、メンテナンスも煩雑になる。そこで見つけたのがDrupalというオープンソースのCMSでした。これを使うと、ほぼコードレスで次のようなサイトの構築ができます(https://adwin-learning.com/)。完全なコードレスとはいきませんが、従来の方法と比べてかなりの時間短縮になります。科学技術において、日本はかつての輝きを失っています。これを挽回して、日本を科学技術立国として再び蘇らせることに情熱を注ぎこみたいと考えています。「革新的な教育システムの創造」を企業理念として、これからも努力を続けたいと思います。