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2001年佐世保高専_田中章愛さん
佐世保高専OBの田中章愛さんは、小学生のころテレビで放送されていた高専ロボコンに触発され様々なロボットを作って楽しんでいた少年でした。高専4年生の時にロボコン全国大会に出場され、この時の経験がロボット作りの楽しさを子どもたちや一般にも広めたいという情熱になっているそうです。現在は、ソニー・インタラクティブエンタテインメントでご活躍されています。 (文責:連合会事務局)
私は現在、プレイステーションでおなじみのソニー・インタラクティブエンタテインメントにてロボットトイ「toio」の商品企画リーダーとして、製品開発を行っています。「toio」はご家庭でロボットを使ったあびやプログラミングに初めて触れあうロボットとして2019年に発売され多くの方にあそんでいただいているほか、小学校での授業や高専・大学・企業などのワークショップ、研究開発にも活用いただいています。
私自身はエンジニアやもの作り関連の親族が多かった影響もあり小学2年生から夏休みの工作で自作のロボットを毎年提出するような子どもで、テレビで放送されていた高専ロボコンにも触発されて様々なロボットを作って楽しんでいました。その後、できるだけ早くからもの作りの腕を磨きたいという気持ちも手伝って地元の佐世保高専電子制御工学科に入学し、4年生だった2000年に憧れの両国国技館での高専ロボコン全国大会に出場しました。有志チームで情熱を注いだこの大会では、試合中ロボットの断線により十分な成績を収めることが出来ず、当時のショックが今でも忘れられませんが、同時に課題に立ち向かう専門家であるエンジニアとしても大きく成長を感じた瞬間でもありました。この経験が自分のロボット作りの楽しさを広めたいという想いや、製品の品質へのこだわりなどに火をつけたといっても過言ではありません。楽しいことが情熱に繋がり、チームワークで課題を見つけて解決する喜びや、クリエイティブなアイデアを次々に試行錯誤する原動力になりました。何より、
「創意工夫する」ということが、あそび感覚で楽しいものだということに気づけたと思います。
その後、筑波大学に編入・大学院に進学し、レスキューロボットの研究で国家プロジェクトに参加しながらRoboCup Rescue世界大会に出場した後、2006年ソニーに入社、以来長く様々なロボットの研究開発に関わってきました。また2013年にはロボットの研究のためアメリカ西海岸のスタンフォード大学に訪問研究員として留学しました。そこでは所属する研究室や授業で知り合った身近な仲間たちが次々とロボット技術を応用したスタートアップを創業し、まるでロボコンのチームやクラブ活動のように昼夜楽しく活動していたのがとても印象的でした。やはりもの作りは楽しんでこそ、という気持ちが高まりました。
帰国後は社内の新規事業創出プログラムの立ち上げに関わり、2016年からはその集大成という気持ちも込めて社内の仲間内で社内スタートアップとしてロボットを使って様々なあそびやプログラミングもできるロボットトイ「toio」の企画開発と製品化を開始しました。2017年に対外発表を行い、2018年からは現在の職場に移り量産開発を行って2019年より全国的に発売することが出来ました。iFデザイン賞金賞など、国際的な賞も多数いただきました。現在はご家庭だけでなく、学校や研究開発にも広く活用いただいています。私自身は「toio」のロボットプラットフォームとしてのさらなる進化のため、新たなあそび方や体験、開発環境などを企画開発しています。「toio」を通じて、高専ロボコンの頃に感じたようなロボット作りやロボットを使いこなす楽しさ、ドキドキワクワクをご家庭・学校などの多くの方に、楽しくてためになる新しい形のエンタテインメントとして広めることができたら、と思っています。
高専では多くのもの作りを経験できますが、単に知識やスキルだけでなく、本格的な機材や設備を使って腕を磨いたり、仲間と一喜一憂しながら楽しく情熱を燃やすことができ、実践的な課題にぶつかりながらもの作りの本質に触れることができた、ということが何よりの宝だと感じています。もの作りは勉強ではなく音楽やスポーツのようなもので、トレーニングと楽しむ気持ちの両方が何より重要だと気づくことができました。不透明な時代を切り開くためには、もの作りで学んだこれらはより重要性を増していると感じます。当時は長く感じた5年間の高専生活ですが、今思えばもの作りを楽しむ人生をものすごく加速してくれた、あっという間のひとときでもありました。今高専に通っている方、これから進学を考えている方には、ぜひ高専でもの作りの楽しさを見つけていただければと願っています。