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2010年奈良高専_川節拓実さん
奈良高専OBの川節 拓実さんは、負けず嫌いの性格もあって、5年間どっぷり高専ロボコンに熱中し、弱小だったチームを立て直し、全国優勝候補となるロボットを作り上げました。この経験は、進学や現在の仕事にも強く結びついているそうです。
川節さんは現在、大阪大学の助教をされ、学生と接する中で、厳しい受験競争を回避できる高専生は、自由な時間が多い分だけそれをどう活用するか、何を学ぶかを選択する必要があると気づかされたとのこと。スポーツでも学問でも何でも良いので高専で熱中できることを見つけて、5年間を有意義に使うことで高専だから得られる経験があります、とのメッセージを頂きました。 (文責:連合会事務局)高専の良い点って何だと思いますか?私は自由な時間が極めて多いことだと思っています。むしろそれが全てと言っても過言ではないはずです。私は現在大阪大学で助教を務めており、高校生や高校から大学へ進学した学生と接する機会が増えました。そこで気づかされたのは高校生が想像以上に忙しいことです。高専は就職でも進学でも大学共通試験すら受けません。一方、高校では多くの試験や模試を受けたり一部では土曜も授業だったりと、高専出身者からすると信じられないくらい多忙そうに見えます。
ただ自由な時間が多いということは、それをどう活用するか自分自身に全て委ねられる訳です。5年の長期間、何かに熱中して何かを極めることもできるし、熱中できることを見つけられなければ人生の大切な時期をなんとなく無駄に過ごすことにもなるのでしょう。自らが何を学ぼうとしたのかが問われる、受験勉強を押しつけられるのかもしれない高校よりもある意味で難しい環境です。私の場合、熱中したのが高専ロボコンでした。
奈良高専に入学した時のロボコンチームは地区初戦負けが当然の弱小チームでした。最初そこまで興味無かったものの部活を見学し、なんか面白そうやな、と入ってみたら徐々にのめり込んだのを覚えています。負けず嫌いだったのか、自身初の大会で対戦相手から奈良に当たってラッキーと言われ腹が立ち、それが無我夢中で強いチームを目指す原動力になったのだと思います。その結果、授業の休憩時間、放課後、私生活ほぼ全てを捧げてロボコンロボコンの5年間で、高専時代のことでぱっと思い出せるのもロボコンのことばかりです。専攻科に進学したのも推薦でさっさと受験を終わらせてロボコンに戻るだけが理由でした。結果的に5年生では全国優勝候補と言われたロボットを作りその時は優勝を逃したものの、創り上げた組織基盤を元に後輩達が奈良としても近畿地区からも初の全国優勝を勝ち取ってくれました。
この経験は単に部活動を頑張った、極端に言えば5年間趣味に熱中しただけに終わったのかというと全く違います。ロボコンで得た知識・経験は大学院に進学した際も、そして研究者としての仕事にも強く結びついています。私は今ソフトロボティクスの研究に従事しており特にこの数年はセンサの研究を進めてきました。センサ開発では電子回路を設計したりプログラミングをしたりすることがありますが、必要な知識やツールは高専の時にロボコンで使ったものとほぼ同じです。ロボットの研究ではぱっと物を作るスキルも重要ですが、ロボコンで物を作ってきた経験が間違いなく今の研究生活の基盤にもなっていると感じます。何よりも「徹底的に仲間と一緒に何かに打ち込む」経験をしたことこそが、新しいことに挑戦し続けられる人生の岐路だったのだと思います。
私個人としては何かに熱中してもらうことが何よりも教育効果が高いと確信しています。より多くの学生・子ども達がこの経験ができるよう、昨年に一般社団法人次世代ロボットエンジニア支援機構(通称Scramble、webサイト:https://scramble-robot.org/)を作りました。この法人ではロボコンで成長したい学生・子ども達に思う存分学べる環境を社会一体となって提供することを目的としています。学校ではできないロボコンチームを複数運営し、全国のロボコンチームに製作費を公募支援するなど、少しでも多くの学生・子ども達が熱中できる環境作りを進めています。
私はロボコンに熱中したことでその後の人生を決定づけた貴重な経験を高専で積むことが出来ました。高専だから技術だけが重要!!って訳ではなく、もちろんスポーツでもアルバイトでも学問でも何でも良いはずです。是非高専で熱中できることを見つけて自由な5年間を思う存分有意義に使ってみてください。そうすると高校とは違った道を選んだ皆さんだからこそ得られる経験があるはずです。