-
HOME > 高専卒業生からのメッセージ > 高専卒業生からのメッセージ > 2010年久留米高専_井上 昂治さん
2010年久留米高専_井上 昂治さん
久留米高専OBの井上昂治さんは、中学生のころ「これからは情報の時代だ」と感じ高専へ進学されました。高専では、今に繋がる2度の重要な転機があったそうです。一つ目は、プロコンに関わり、仲間とともに自分たちで考えたソフトウェアを大勢の前で披露したことが大きな経験となりました。二つ目は、卒業研究を通じ、まだ誰もやったことがないことをなし遂げたことだそうです。
井上さんは、久留米高専専攻科修了後、京都大学大学院へ進学し、現在は京都大学大学院情報学研究科で教員としてご活躍されています。困難にチャレンジし、仲間とともにやりきることへのメッセージをいただきました。 (文責:連合会事務局)私は京都大学で大学教員として働いています。
私は京都大学で大学教員として働いています。2011年に久留米工業高等専門学校制御情報工学科、2013年に専攻科をそれぞれ卒業(修了)し、京都大学大学院情報学研究科へと進学しました。その後、修士号と博士号を取得しました。音声言語処理、音声対話システムについて学び、現在は人間酷似型ロボット(アンドロイド)を用いた音声対話の研究に力を入れています。ロボットの「人間らしさ」を追求することで「人間とは何か」という究極的な問いに取り組んでいます。
中学生のころにインターネットに触れ「これからは情報の時代だ」と子供ながらに感じ、近くの高専へ進学することを決めました。また、久留米高専の自律を重んじる自由な学風が私の性格にあっているなと思っていました。
さて、高専生活では、今の私に繋がる重要な転機が2度ありました。
1度目は「プロコン(プログラミングコンテスト)」です。当初は、課外活動としてプログラミングに取り組むことは全く考えていませんでした。そんな中、たまたまプロコン部の勧誘のチラシを受け取り、「興味ある?」と先輩に聞かれ、「ちょっとだけ...」と答え、気がついたら入部していました。その後、高専プロコンの競技部門や自由部門に挑戦する機会に恵まれました。そして、仲間とともに、時には一緒に喜び合いながら、時には激しく意見をぶつけ合い、自分たちで考えたソフトウェアを作り上げ、大勢の人たちの前で披露できたことはとでも大きな経験でした。
2度目の転機は「卒業研究」です。配属された研究室で、いきなりトップジャーナルの英語論文を渡され、英和辞書を片手に四苦八苦しながら論文を読みました。しかし、毎日コツコツと議論と実験を積み重ねることで、国際会議で論文発表をすることができました。卒業研究を通じて、まだ誰もやったことがないことを成し遂げる喜びを味わうことができました。あまりにも研究が楽しかったので、もともと目指していた大学編入はせず、そのまま専攻科へ進学しました。
この選択は今でも正しかったと思っています。そして、大学院へ進学し、大学教員となった今でも、研究の楽しさにずっと魅了されたままです。これからは大学教員として、このような転機を今度は私が後輩の皆さんに少しでも提供することができたらな、と思っています。
コロナ禍を経て、情報技術の重要性はますます高まり、技術も社会もますます複雑化していくでしょう。このような変化の激しい時代に技術者として社会へ貢献してくためには、最新技術の知識だけでは不十分だと思います。私が特に大切だと思っていることは(1)困難なことを一緒に成し遂げる仲間を大切にすること(2)何事も諦めずに最後までやり抜くことです。この2つは高専でのプロコンや卒業研究を通じて学ぶことができました。
この「高専生からのメッセージ」に掲載されている他の方と比べると、私は客観的には何かを達成することはできませんでした。例えば、プロコンで優勝したり、研究で受賞したり、といったことはありませんでした。しかし、高専を卒業するときには「やりきった」と自分で納得することができました。
高専での5年間(専攻科を含めると7年間)はいろんなことにじっくり・のびのびとチャレンジできる環境が揃っていると思います。現在の高専生、あるいはこれから高専生を目指す皆さん、自分が心から楽しいと思ったことにぜひ全力で取り組んでみてください。困難なことにチャレンジすることで「高専の楽しさ」を味わってもらえればと思います。