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2012年度群馬高専_石井 晃さん
群馬高専OBの石井 晃さんは、小学生の時に知ったゲームクリエイターの夢を叶えました。高専では、毎日楽しく専門分野の勉学や研究をされ、課外活動ではスマホアプリ制作にのめり込んだそうです。高専時代に修得したことは現在の仕事でも大いに役立っているとのこと。現在は、株式会社ソニー・インタラクティブエンタテインメント Team ASOBIでご活躍されています。そんな石井さんから、「エンジニアに興味がある中学生は高専を検討してみては」と、在学中の高専生には、「今学んでいることはすべて意味がある」とのメッセージをいただきました。(文責:連合会事務局)
私は現在、ゲームプログラマーとして日々ゲームソフトの開発をしています。小学生の時に「キングダムハーツ」というゲームに出会った時からゲームクリエイターという職業は私の夢でした。そんな夢に一歩も二歩も近づけてくれたのが高専という存在です。
私が高専という単語を初めて知ったのは中学3年生の春。担任の先生との進路面談の時でした。特にその時は志望校は決まっておらず、自分の実力よりもちょっと偏差値の高い高校に入れたらいいな~と漠然と思っているだけでした。そんな時に「石井君はパソコン好きだし高専とかいいんじゃない?」と提案してくれたのが担任の先生です。私の家族に高専出身の人はおらず、学校や塾の友人も誰一人として高専を目指している人は居なかったので情報が全くありませんでしたが、当時は人と違ったマイノリティーな物に妙な魅力を感じるお年頃で惹かれました(中二病というやつです)。真面目に調べてみると、5年制という人生を長く拘束されることにデメリットを感じた一方で、1年生から専門的なことを学べる、自由な校風、大学受験をしなくて良い(当時は卒業後は就職するつもりでした)、文系の科目よりも理系の科目を多く学べる、入学試験も理系科目の比率が高い(文系科目は苦手でした笑)、など多くのメリットを感じ高専受験を決意したのでした。
私が選択した学科は電子情報工学科です。主にプログラミングなどの情報工学を扱う学科です。中学生の時に自主制作ゲームに取り組み、その時にプログラミングの魅力に気づきもっと学びたいと思ったのが決め手でした。
高専に入ってからは毎日がとても楽しかったのを覚えています。まずはクラスメイト。みなある程度専門分野に興味をもって入学してくるので、話がとても合います。次に先生。常にドラクエに例えながらプログラミングの授業をする個性的な先生や、また企業出身の先生もいらっしゃるのでより実践的な授業が展開されていました。特に刺激的だったのはPC-8000シリーズのLSI設計に携わっていた先生の授業で1からCPUを設計するという論理回路の授業です。実際に回路を設計して、チップに焼き込んで、動作確認をした時は感動しました。
高専で学んだことは実践的で今の仕事でも大いに役立っています。物理や数学、プログラミング、データ構造とアルゴリズム、並列処理などゲーム制作の現場で毎日使っている知識です。気持ちの良いキャラクターコントロールやインタラクションを作るには物理や数学の知識が不可欠で、また様々なプログラミングの知識はヌルヌル動くゲームを作るのに不可欠な知識です。物理や数学の知識はもっとちゃんと高専で学べばよかったなぁと後悔しつつ、今でも勉強の日々です。
高専では普通高校には無い「多すぎる実験レポート」と「卒業研究」があります。どちらも在学中は大変キツかったのを覚えていますが、後々の人生で役立つ多くの知識を得ることができました。実験レポートとは、何か実験を行い、その結果に対して考察をした後、レポートという形で文章にまとめる訓練です。例えば、「カーボン抵抗と豆電球を使ってそれぞれの電流と電圧の関係を調べる」といった内容です。こちらは既にゲオルク・オームによって導き出されたオームの法則を確かめる実験ですが、このように何か仮説(電流と電圧と抵抗には何かしらの法則があるのでは?)を元に実験を行い、考察し、レポートにまとめ発表する、という行為はまさに卒業時に行う卒業研究の予行練習です。卒業研究では今度は私達が何か新しい発見をするために、仮説を立て、実験をし、考察し、そして論文という形で発表します。この研究から得られるスキルは大学進学後ももちろん必要になりますし、社会人になってからも必要になります。分野に対する深い知識、仮説や実験を組み立てる論理的思考、得られた知見を論文にまとめる文章スキル、そしてスライドを用いた口頭発表によるプレゼンテーションスキルなど多くのスキルを得ることができます。当時は大変でしたが、その経験は今でも生きています。
課外活動ではゲームを自主制作してコミックマーケットで販売したり、スマホアプリを制作したりしていました。特にスマホアプリ制作にはのめり込み、在学中に10個以上のアプリを制作したのですが、そのきっかけは高専の友達からスマホアプリ開発に関する本を貰ったことでした。こんなきっかけがあるのも高専ならではだなぁと今になって思います。
こういったコンテンツ制作から学んだことは、まずは思いついたアイデアを形にしてみるところで50%ということでした。その後そのコンテンツを一般の方々に届けられる形にしようと思うと、さらに2倍以上の努力が必要です。一般公開となると、遊びにくいところを修正したり、チュートリアルを作ったりなど、様々な追加実装が必要になってくるのですが、その過程でも多くの学びがあります。また、公開後にいろいろレビューや反応が見られたり、運良くバズるとメディアで記事を書いてもらえたり、多くの果実も待っています。ぜひ、何かを作ると決めたら一般公開までチャレンジしてみてください。そこには多くの学びと果実が待っています。何より、とっても楽しいです!
高専に入学した当初は就職する気でいたのですが、群馬高専では8割以上の学生が大学進学を選択しており、私の考えも自然と大学進学へシフトしていました。スマホアプリ開発を通じてヒューマン・コンピュータ・インタラクション(HCI)という研究分野に興味を持ち、その中でIPLABという筑波大学にある研究室に出会い進学を決意しました。結局、研究という世界にハマり大学院まで進学しました。今では進学して本当に良かったと思っています。大学・大学院では、何のプレッシャーも無しに純粋に研究に打ち込むことができます。知の探究という贅沢な時間を謳歌することができます。そこでは、海外での研究発表や、展示などはもちろん、かけがえのない友人とも出会いました。ぜひ、少しでも研究に興味があれば大学進学を検討してみてください。高専では想像もできなかった広大な世界が広がっています。
大学院で修士号を取得した後は、ゲーム会社へ就職しゲームプログラマーとして日々楽しく過ごしています。小学生からの夢が叶いました!現在はTeam ASOBIというゲームスタジオに所属し、主にキャラクターコントロールやギミック、エネミー、UIなどプレイヤーが実際に触るゲームプレイ領域を担当しています。この仕事では、高専や大学で学んだ物理や数学、プログラミング、HCIに関する知識をフルに活用しています。社会人になってからも日々勉強の毎日ですが、好きなことなのでとても楽しいです。
長くなってしまいすみません。想いが溢れてしまいました笑 ここまで読んでいただきありがとうございます。
伝えたかったことは、いま高専に興味を持っている中学生の方には、もしエンジニアという職業に興味があるのであればぜひ高専を検討してみてください。多くの学びと、多くの同士と出会えます。目指す人が周りに少なく、また5年制という一般的ではないシステムですが、そのあたりはあまり気にしなくて良いと思います(大学1年生というキラキラ期間を過ごせないのは少し残念ですが...笑)。
いま高専に在学中の方には、今学んでいることはすべて意味がある、ということを伝えたいです。在学中は「今はゲームエンジンとかあってアルゴリズムとかは全部実装済みなのに、なんでこんなこと学ぶのだろう?」など思うこともありましたが、実際に現場に入ってみるととっても重要です。物理も数学も、全部重要です。レポートなども「多すぎだろ~」と実際私も在学中に嘆いていましたが、こんなにも役立つとは思いませんでした。ぜひ、よく遊んで、よく勉強して、最高の高専生活を送ってください!
高専という存在は確実の私の人生を良い方向へ導いてくれました。本当に選択して良かったと思っています。もし何か相談したいことがありましたらこちらまで( https://exilias.net/)ご連絡ください!高専のこと、大学のこと、研究のこと、ゲーム業界のこと、などは相談に乗れます。