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2015年度東京高専_佐藤 輝一さん
東京高専OBの佐藤 輝一さんは、ロボコンをしたくて高専へ入学されました。いろいろと大変なロボット製作ですが、ものづくりが好きなご自身にとっては楽しかったそうです。また、高専時代に得た経験は今の仕事にも活かされているそうで、楽しいと思えることを仕事にできて、人の役に立つ素晴らしさを実感しているので、高専に行って本当によかったとのこと。
現在は、株式会社本田技術研究所でご活躍されています。(文責:連合会事務局)
本田技術研究所でロボットなどの設計者として仕事をしている、東京高専のOBです。これから高専に入ろうか迷っている人、高専に入ってこの先を悩んでいる人に向けてお話したいと思います。
私が高専時代に得たもの、いまに活かせていることはたくさんあります。授業や実習で身に着けたことや、高専時代の教科書を仕事でも使うのです。
しかも普通の会社では、普通の大卒の何も知らない新人を育てていくというケースが多いので、高専で得たものはアドバンテージになります。高専卒という時点で、使えそうなヤツだというレッテルを貼られます。
要するに、「優れた技術者を養成する高専」という地位は、間違いなく産業界に存在しています。そして実際に高専は素晴らしい環境だったと私は感じています。私はロボコンがやりたくて、高専に入りました。まんまとドハマりして、ロボットを作っては壊し、大会本番では負け、リーダーを務めてはメンバーに嫌われ、いま思い返すとなぜ続けられたのだろうと不思議に思うほどがむしゃらにやっていました。しかも結局のところ、高専ロボコンでは大した成果を上げられませんでした。
その後、卒業研究でもロボットを作り、大学編入後は学生ロボコンに挑戦し、学部・大学院の研究でもロボットをテーマにして、私の学生生活は終始ロボット作りに明け暮れていました。これほどロボットにしがみついていたのは、ものづくりが好きで、いろいろ大変なロボット製作も自分にとっては楽しかったからだと思います。何がどう楽しいのかをうまく伝えるのは難しいですが、ものづくりは「こんなことを実現するものを作りたいという想像」から、「大きさ・重さ・速さ・パワー・お金・時間などいろんな制約のある現実世界で成立する実物」に落とし込んでいくことなのです。
そのためにいろんな技術を使って工夫をして試行錯誤する。すごく泥臭い作業になることもありますが、淡々とこなすか、それすらも楽しむ、そんな感じでしょうか。完成したときの達成感とかそういうのはオマケみたいなものだと自分は思っています。とは言っても、もちろんロボコンで会場を沸かせた瞬間は最高でした。楽しいと思えることを仕事にできて、それが人の役に立つならこんなに素晴らしいことはありません。運よく、いまはそういった仕事をしています。ガンダムやドラえもん、鉄腕アトムのようなロボットを開発しているわけではありませんが、「人の役に立つ」技術開発に携わっていて、楽しくやっています。
貴重な青春時代を、高専のように偏った狭い世界で棒に振ってしまうなんて...と思っていた時期も正直ありました。高専に入ろうとする人や現役高専生の悩みは大抵これなのではないでしょうか。高専の強みでもあり弱みでもある側面ですね。私はなるべくいろんな学部のある大学に編入学して、いろんなコミュニティに入ってみたりしました。高専にはいないような人たちと混ざることも凄く大切です。単純に世界が広がりますし、私たちが作った技術や製品を使うのは、高専にはいないような人たちが大多数だからです。
人類の歴史を振り返ると、文明を発展させ生活を豊かにしてきたのは技術者だと言っても過言ではありません。高専は、中学卒業の時点でそういった道に進もうかなと思った人が多く集まる特殊な場所です。
私にとって高専は、やりたいことを見つけることができ、やりたいことにのめりこんで本気で取り組むことができる場所でした。そのやりたいことがロボコンだったこともあって、授業や実習も繋がるところがたくさんあり、現在の仕事にも繋がっています。
いまは、高専に行っていて本当によかったと思っています。