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2019年度苫小牧高専_加藤 桃子さん
苫小牧高専OGの加藤さんは、電気通信大学に編入し、現在、チェコ・プラハ工科大学で核融合を学ぶ修士学生として留学されています。高専という、大学受験に捕らわれず、即戦力になるための学問が早くからできたこと、そして教員の居室で他学生と共にいろんな話をした時間が大変好きで、悔いなく過ごせたと話されています。また、英語プレコンにも複数回出場し、その度に全国大会へも出て、他の高専の学生とも交流が持てたこと、その他、短期留学やサイエンスキャンプへの参加、さらには5年間の寮生活等を通じ、大変良い社会経験が持てたこと、その一つ一つの経験が合わさって今の自分がつくられていると感じているそうです。
現役高専生に対しては、好きなことができる場所にいるのだから、「好きなことをただただ、がむしゃらにやってください」とのメッセージをいただきました。
(文責:連合会事務局)
こんにちは、苫小牧高専の電気電子工学科を卒業後、電気通信大学に編入し、執筆現在、ヨーロッパで核融合の修士2年をしている加藤桃子といいます。今振り返ると、高専の5年間は決して短いものではありませんでしたが、自分なりに悔いなく過ごせました。学校の先生と生徒ではなく、教員と学生という、高校とは異なる環境で学んだ経験は何にも代えがたいと思います。私の高専のみならず、どこの高専でも入学時に、「あなたたちは生徒ではなく学生です」と言われると思います。そして大学受験に捕らわれない、即戦力になるための学問を初めから学ぶことが出来たのは非常に良い学び方だったなと感じます。
そもそも15歳から5年間も工学を専門にして学べる学校は日本のみならず、世界的にみても特殊なのではと感じています。高校数学もわからない学生に工学をいきなり教えるのは非常に大変だと今ならわかりますが、高専ではそんな私たちに根気よく、何度も繰り返させることで身につけさせてくれました。お陰で、高専で習った電気工学は大学に行ったあとでも修士でも、他の学生に勝るとも劣らないレベルだと感じています。また高校生と変わらない年代だった私たちにも学生として向き合ってくれた教員との距離感が最高でした。どの先生にも学生側からアポなしでとりあえずノック出来て、質問だけじゃなく雑談が出来る環境というのは大学では難しいのではと思います。放課後などに先生の居室で他の学生とともに色んな話をした、あの時間がとても好きでした。自分の興味、知識を広げてくれた時間でした。
プレコンにも複数回出場し、全国大会にもその度に出ることが出来ました。
これらの準備で、英文を書くこと、プレゼンをすること、英語の発音をかなり鍛えることが出来て、ヨーロッパで英語で修士をしている今に非常に役立っています。他の人に比べてもプレゼン慣れをしていると、高専、大学、修士で褒めてもらえています。プレコンを通して何か月もの間、聴衆にどのように話せばいいのかと向き合い続けました。何度も挑戦したおかげで、プレゼンをしているときも自分がどのように見えているかを意識せずとも考えられる、わかるようになりました。またプレコンで知り合った他高専の学生とも高専を卒業した今でも交流があります。私は外に出るクラブ活動をしていなかったので、他高専の学生と知り合う機会が無かったのですが、プレコンで出会うことが出来て楽しかったです。
高専には、高校のような厳しい規則が無く、非常にのびのびと過ごすことが出来ました。髪の毛を染めるなど自由に過ごすことができ、誰にも咎められないのが心地良かったです。服装のみならず、教室でおもむろに工作をする人がいたり、いろんなゲームをしたり、個人がそれぞれ好きなことをして、それを変わっている人だと思う/思われる価値観が無かったことが本当に気楽で、高専の良いところだと思います。そのため、なんでも自分の興味があることに手を出すことが出来ました。短期留学になんども行ったり、サイエンスキャンプなどに参加したり、ダンスをしたり、バンドを組んだり、学級委員長をしたりと色々させてもらえました。これらが出来たのは、いろんな先生が居て幅広く助けを求めることができて、私が何をしても動じず気にしないでいてくれる友人たちのおかげです。また私は寮に5年間住み、年の離れた人たちとの集団生活で非常に良い社会経験を得ることが出来ました。朝から夜までたくさんの人と顔を合わせ、それぞれが異なる性格をしているなか、自分がどの立ち位置でどのようにふるまうか考えなければならず、コミュニケーション能力がかなり上がりました。
高専から大学への編入は独学の人がほとんどだと思います。授業で勉強する内容から飛躍した、ほとんど院試のような内容を年単位で勉強する必要があります。私の高専では進学が1割程度で同じ大学を受ける人も周りに居らず、周りが早々に就職が決まるのを横目に夏頃まで一人で勉強しなければなりませんでした。高専から大学に編入する人はこのようなパターンがほとんどだと思いますが、独学で孤独に勉強しなければならない状況という、この経験は自分を強くしてくれたと思っています。
これらの経験が合わさって今の私があります。海外の修士に出願するという挑戦が出来たのも、やりたいことをがむしゃらにやれて、助けてくれる人が周りにたくさんいて、みんな応援してくれていた高専での経験があってこそ、今回もそうだと思わせてくれました。また、学部から修士で専攻を電気工学から理学物理に変えたのですが、授業についていくのが本当に大変でした。そんななかでもひたむきに食らいついていけたメンタルと体力があったのは、高専の忙しさ(勉強や課題で忙しいなか、みなクラブ活動もしているため)や大学編入のための独学の期間で鍛えられたからだと実感しています。
自分がやりたいことを周りに遠慮することなく、好きにやっていいんだという空気感が高専にはあります。だからこそ自分でどんどん進んでいける人が多く生まれるのではないでしょうか。現役の学生のみなさんは、好きなことをただただ、がむしゃらにやってください。高専に来たらどんなことでも、あなたが好きなことができます。高専という、好きなことを好きなように出来る環境があることに感謝しています。